- 月
【月の遠地点リリス】秘めている暗い感情に気づき、統合していく✨
もくじ
月の遠地点・リリス。その解釈は複雑で捉えにくいものです。
リリスの影響を感じにくい方もいますし、簡単には他人に話せない心の奥にあるものだからでしょう。
この記事では、当サイトが専門としている「月の欠損」の視点も取り入れつつ、リリスを紐解いてみます。
リリスとは何か
ホロスコープにおけるリリスは、主に3種類あります。
- ブラックムーンリリス
- ダークムーンリリス
- 小惑星リリス
当記事では、このうちの「ブラックムーンリリス」について書いていきます。
ブラックムーンリリスは、「月の遠地点」または「月の軌道の空の焦点」のことです。8年10ヶ月で12星座を1周します。
月が地球をまわる軌道は楕円型なので、月と地球の距離は場所によって違います。
そのうち、地球から最も遠い点がリリス。惑星のように実態があるわけではなく、ポイントです。
また、軌道の空の焦点もリリスといわれます。地球から見ると、月の遠地点と空の焦点は同じ方向にあるためです。空の焦点は、物理的には何の働きもありません。
リリスは実態がなく何の力もはたらかないけれども、月の軌道には必要不可欠なものという、ミステリアスな存在なのです。
POINTブラックムーンリリスは、(月の軌道が不規則であるため)計算手法の違いでさらに「トゥルー(正確な位置)」と「ミーン(平均の位置)」に分かれます。この2つはあまり違いはないですが、トゥルーの方が真値に近くなります。よく使われるのは「ミーン」の方です。
リリスの意味を神話から紐解いてみる
ホロスコープにおけるリリスの意味を、神話にたずねることで紐解いてみます。
リリスにかかわる神話はいくつもありますが、ここでは3つに絞って紹介します。
- アダムの最初の妻
- シュメール神話の2人の女性
- 日本神話のイザナミ
アダムの最初の妻
キリスト教旧約聖書の創世記によると、リリスはアダムの最初の妻であり、アダムとの子どもを産んでいます。
リリスはもともと楽園で、自然や動物と親しんだ明るい女性でした。
しかしある時、アダムはリリスを支配下に置こうとしました。
リリスはアダムと同じように土から生まれたのに、対等でないのはおかしいと主張し、エデンの園から出て行きました。
命令に背いたリリスは、下半身を蛇に変えられてしまい、悪魔との子どもを産み、悪魔とともに男児を殺すという生涯を送っています。
一方のアダムは、自分の助骨からイヴをつくり服従させました。男性と対等でありたいと主張したリリスが姿を消し、男性に従順なイヴが作られたことで、現在のような男女の関係性ができあがったといえます。
シュメール神話の2人の女性
南風
初期のシュメール神話では、アダパ(男性)が南風(女性)の翼を壊したというエピソードがあります。翼を自由の象徴とするならば、男性が女性の自由を奪ったと考えられます。
それ以来南風は、人類に敵意を抱くようになりました。
ニンリル
神々の王エンリル(男性)が女神ニンリル(女性)を強姦。
その罰として、エンリルは冥界に追放されます。
その後もニンリルはトラウマに苦しめられ、男性への性に対する受け入れ難い思いを消化しきれずにいました。
そして世界を放浪した後、エンリルを追って冥界へくだり、男性へ復讐を誓いました。
日本神話のイザナミ
最後に、日本神話を紹介します。日本神話には当然「リリス」という名前は出てきませんが、「リリスなるもの」を見出すことができます。
日本神話には、イザナキ(男性)とイザナミ(女性)という、とても仲のいい夫婦がいました。
ある時、イザナミは火の神を産んだため死んでしまいます。
嘆き悲しんだイザナキは、黄泉の国にイザナミを訪ねます。
死んだイザナミは肉体が腐ってウジが湧いた、醜い姿。絶対に見てはならないと約束します。
しかし、イザナキは約束を破ってイザナミの姿を見てしまいます。
そのあまりの恐ろしさにイザナキは逃げ出し、怒ったイザナミは追いかけます。最後にイザナミは「この世の人間を一日で千人殺してやる!」と言い放ち、イザナキは「ならば一日に千五百人生もう」と返して2人は別れてしまいました。
イザナミの見られたくないものを勝手に見たにもかかわらず、イザナキは受け入れることができず逃げ出してしまったのです。これが2人の別れた原因です。
リリスはなぜ悪魔となったのか
神話をいくつか見てきましたが、すべてに共通するのは、
最初は男女の仲はよかったのに、ある時をきっかけに別れ、二度と仲が戻ることはなかったということ。
もともと明るかった女性が、男性との関係が壊れることで悪魔に変わってしまったのです。
その原因は、男性が女性を軽んじたことにあります。
- 男性が女性を対等に扱われなかったこと
- 男性が女性の自由を奪ったこと
- 男性が女性を性の対象として雑に扱ったこと
- 男性が女性の汚い部分(見られたくなかった部分)を受け入れなかったこと
男性性の未熟さゆえに、女性性が深く傷ついてしまったことが悲劇の始まりなのです。
女性が追い出されてしまったあと、男性原理社会が作られていきますが、その憎しみはシャドウとなって私たちの心のなかで疼いています。
「男性原理への復讐」といえば、フェミニズム・ジェンダーなどの運動に関連しているともいえますし、
もっと大きくとらえると、愛する人から捨てられた悲しみが、何世代にもわたって、私たちの心の奥底にずっと残っていて、
自殺・戦争・大量虐殺・人口削減計画などの原動力になっているのかもしれません。
POINT男性が悪いというのではなく、人類の「男性性」が未熟であるということです。
ホロスコープにおけるリリスの意味
では、神話を踏まえて、ホロスコープでのリリスの意味を考えてみます。
ホロスコープ上のリリスは、
「男性原理(男性・父性・権威など)への憎しみを感じやすい状況や場面」
を表します。
もっと一般化すると、
「他人に見せられないような悪魔的な嫌悪感、心の奥に秘めている暗い感情を抱く事柄」。
自分や誰かを犠牲にしてしまいそうになるほどの憎しみを感じる場合も。
また、男性性・女性性は誰でも両方持っているため、性別が男性でも女性でも関係はありません。(女性の方がより感じ取りやすい面はあるかもしれません。)
リリスの記号はこちら👇
サインとハウスごとのリリスの意味は次のようになります。
(ご自身のリリスがわからない方は、https://www.arijp.com/horoscope/のサイトでお調べください。「小惑星を表示」にチェックを入れるとリリスを表示してくれるようです。)
牡羊座/1ハウス
自分の身体・容姿・行動・仕草への嫌悪感、見られたくない気持ちがあります。出生時のことで、他人に言えない問題や秘密があることも。
他人から見ると、セクシャリティや不思議な魅力があるのでモテやすいですが、異性から性的に求められることによって辛い思いをするかもしれません。
挑戦すること・一生懸命戦うことに対しての抵抗感があるかもしれません。
牡牛座/2ハウス
お金・豊かさ・五感に関することをどこか嫌悪する気持ちがあります。
お金が足りなかったことで恥ずかしい、お金で苦労する人を見ることが辛いなどの思いを抱きます。
他人に勘付かれないように振る舞うけれど、人一倍お金にこだわっていたりします。
お金によって上下関係が決まることへの嫌悪感、男女の奢り奢られ問題などにも反応しやすいかもしれません。
双子座/3ハウス
コミュニケーション・文章・学校教育・兄弟姉妹・小旅行に関することで複雑な思いを持ちやすいです。
人に何かをはっきり伝えることが怖くて曖昧になってしまったり、兄弟姉妹と比較された暗い過去があったり、小中学校時代の成績や先生との関係に問題があったり、旅行先で嫌な思い出があったりするかもしれません。
教育の場での男女関係など、男性(もしくは年上の人・権力者などの男性原理)が関わってなかったか思い出してみてください。
蟹座/4ハウス
家・家庭環境・地域・生い立ちに暗い感情があります。
愛情不足・過干渉などで、両親への嫌な思いがあるものの、人に知られたくありません。家族の犠牲になっている可哀想な自分を人に伝えるのが辛いのです。
家庭においての男性や権力者との関係が、家族の絆に対しての嫌悪感につながっているかもしれません。
獅子座/5ハウス
華やかな世界・恋愛・青春・楽しいことに対して暗い感情を持っています。楽しいはずのものが悲しむ原因になってしまい、どこか前向きになれない自分がいます。
恋愛で傷ついたり、スポーツで心に傷が残るような失敗をしたり、芸能・芸術関係での挫折などがあり、立ち直れません。
恋愛・青春など楽しいはずのものが、男性との関係によって憎しみの気持ちを生み出してしまったのかもしれません。
乙女座/6ハウス
仕事・義務・健康・片付けに関することで暗い感情があります。
例えば、能力があるはずなのに仕事で評価されなかったこと、仕事で男性との比較で不平等を感じたこと、身体が弱いことにショックを受けたことなど。
職場恋愛が発展しやすいですが、様々な問題も起こりやすいです。セクハラ・パワハラなど、男性や権力などが絡んだトラブルがあり、働くことへの拒否感につながっているのかもしれません。
天秤座/7ハウス
結婚・結婚生活・人間関係・社交の場において暗い感情があります。
表面的には問題ない結婚生活がなぜか苦しく、それを勘付かれないように繕って疲れてしまいます。相手に委ねたり、自分をさらけ出したりできないからです。
考えの異なる人、本当は嫌いな人とも付き合えるし、好きでもない人に求められることが多いです。しかし、関係が深くなるほど自分の偽りに気づき苦しくなります。
蠍座/8ハウス
霊的なこと・死・嘘・性・セックスに関して嫌悪感や暗い感情があります。
運命についても同じで、自分ではどうしようもないことで追い詰められて苦しくなります。究極の苦しみを体験していても、他人に知られないように装うことになります。
不倫の誘いが多いなど、性に関することで男性を恨むようになるかもしれません。
射手座/9ハウス
高等教育・海外・社会正義・法律関係・宗教などで、嫌悪感を抱きやすいです。
事情があって行きたい高校・大学に行けなかったり、受験での失敗を他人に知られたくなくて葛藤したり、海外に関することで辛い体験をしたり、社会正義や法律関係での不運が起きたりするかもしれません。
高等教育や海外における男女の問題や、社会正義・法律関係で性別によって不平等を感じたことはないか思い出してみてください。
山羊座/10ハウス
両親のこと・仕事・大きな組織・地位・権力に対して暗い感情や嫌悪感があります。
両親の秘密を知ってしまったり、仕事でプライドを踏みにじられる惨めな体験をしたり、仕事で成果を残したのに表立って評価されない不運があったりします。
父親との関係や、権力者からのパワハラやセクハラなどが、仕事やビジネスに対する憎しみにつながっているかもしれません。
水瓶座/11ハウス
交友関係・サークル・コミュニティ・夢・自由などに嫌悪感を抱きやすいです。
例えば、友人関係で裏切りに遭ったり、正論であるはずの意見が周囲に受け入れられない、夢や企画が挫けたり、自由な人生が送れないなど。
サークル活動での男女関係の問題、夢が男女関係によって奪われてしまった恨みが、ずっと心に残っているかもしれません。
魚座/12ハウス
隔離・隠遁生活・孤独・スピリチュアル・依存などへの嫌悪感を抱くかもしれません。
長期入院・刑務所暮らしを余儀なくされたり、アルコール/薬物依存、ストーカー被害など、普通の生活ができなくなることもあります。
これらのことに、男性や男性原理が関わっていなかったかを思い出してみてください。
リリスを癒す(克服する)には
リリスは克服できるもの
リリスは暗く深い傷であるため、簡単には癒すことができません。しかし、男性性と訣別したままでいいわけではなく、傷が癒せたならどんなに救われるか…と心の奥底では望んでいるはずです。
月の欠損を提唱されたマドモアゼル愛先生によると、「月の欠損は克服できないけれど、リリスは克服できるもの」だそうです。
では、どうやってリリスを癒すことができるかを考えてみます。
リリスの本質は「二項対立」
リリスが悪魔になってしまったのは、男女関係がきっかけでした。
しかし本質は、男女関係に限ったことではないと私は考えています。
本来1つであったものが、2つに別れてしまったことが、悲しみを生み出した原因ではないかと思うのです。
- 善と悪
- 敵と味方
- 金持ちと貧乏
- 幸せと不幸
- 生と死
こうした「2項対立」的な価値観が生まれたことこそがすべての始まりだったのです。
アダムと別れたリリスが憎しみを抱き、人を殺すようになったように、
分断された価値観に苦しんだ人が、自殺・他殺・戦争・感染症などを起こし、多くの命が犠牲になっているのかもしれません。
つまり、私たち個人がリリスを癒すには、この分断された価値観を統合することが不可欠だと思います。
救いの道はやはり「月光反転法」だと思う
占星術では、正反対にある2つの星座が「2つの相反する価値観」に当たります。
- 牡羊座と天秤座(戦争と平和)
- 牡牛座と蠍座(物質と精神)
- 双子座と射手座(国内と国外)
- 蟹座と山羊座(家庭と仕事)
- 獅子座と水瓶座(支配と反抗)
- 乙女座と魚座(秩序と混沌)
これらの対立する価値観を統合することでリリスが癒せるのだと思います。
「陰陽統合」みたいなことでしょうか。
リリスが明るい女神だったころの世界は、すべてのものが一体のユートピアのようなものでした。これが真っ二つに分離されてしまったのです。
リリスの傷を乗り越えるには、すれ違い別れてしまった男女が仲直りをするように、2つの相反する価値観を統合していくことが必要です。
ここで、「月の欠損」と「月光反転法」のことを関連させてみます。
月の欠損は人に苦しみを与える「影」であるのに対し、月光反転法は対立する星座を生かすことで苦しみを解放してくれる「光」。
月光反転法の考え方は、リリスを癒すことにも応用できそうです。
まずは自分のリリスのサインやハウスの正反対を意識し、行動してみる。そして正反対の位置から、反転前の価値観を眺めてみる。
そうすることで、どっちでもない答えを見つけ、どっちでもいいと悟り、統合していく。
そんな意識の変革が、自分を癒し、他者を癒し、社会を癒すのだと思います。
女性性の目醒めとリリス
当サイトは以前、「月光反転法は女性性を目醒めさせ、太陽の道を拓く」という内容の記事を書きました。
月についての記事ではありますが、リリスと絡めて考えるとよりしっくりきます。
【おまけ】エヴァンゲリオンの人類補完計画
最後に「エヴァンゲリオン」という有名なアニメ作品を紹介します。
これは聖書をモチーフにして描かれた作品で、アダム・エヴァ・リリスが登場します。
この作品の重要なカギに「人類補完計画」というものがあります。
「人類補完計画」は人類という不完全な存在を、知恵の実と生命の実を両方もった、完全なひとつの生命体にすること。
知恵の実を与えられた人類は、他者と群れ、争い、妬み傷つき、滅ぼしあう。
生命の実を与えられた使徒は、他者という概念がないため争いがなく、永遠に生きられる。
人類補完計画は、人類に生命の実を与え、完全な一つの生命体にすることだそうです。そうなれば、心の壁がなくなり、争いも死もなく、穏やかな世界になる。
登場人物は、アダムとリリスが一体となり、愛する人と完全にわかり合って一つになりたいという思いを補完計画で達成しようとしました。
つまり、エヴァンゲリオンの物語でも、アダムとリリスが別れ、他者という概念が生まれ、争いが起こるようになったことが読み取れます。
物語の結末についてはさておき、人類補完計画は月光反転法と似ていると私は感じます。月の光の当たらない部分を補うように、月光反転法は欠損を補完する道だと思います。
月光反転法によって、対極にある2つの星座の価値観を融合することで、自分のなかの暗い感情を解放し、他者との壁を取り払い、楽園を取り戻せるのではないでしょうか。
読みものカテゴリー
管理人
マドモアゼル・愛先生の月理論にもとづき「月の欠損」と「月光反転法」を中心に研究記事やサービスをお届けしています。
特に、月光反転法をホロスコープに表した▶︎「月光反転ホロスコープ」作成サービスを独自開発。
経歴
お茶大卒 > 企画職 > プログラマー > 占星術に沼る > 占星術研究家&フリーター
占星術が面白すぎて道を踏み外したかもしれません(笑)。1人でも多くの方が本当の自分を生きるお手伝いができればと思います!